本当の人の美しさって何だろう

関口 悟

 最近、テレビで大谷翔平選手(MLB・エンゼルス)が出演する美容液のCMを見かけます。元々女性向けの高額なブランドで、それまで目立ったTVCMも打ってきませんでした。
このCMには大谷選手による次のナレーションがあります。「やることをやってきたか。いい顔をしてきたか。肌を整える。自分が整う。」

MLBエンゼルスでの活躍や、今年(2023年)の侍ジャパンWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)優勝貢献などの実績と、大谷選手の端正な顔立ち、活躍や実績のもとになるストイックな生活があってこそ成り立つCMだと思います。

大谷選手のこのCMが流れてから、このブランドの売り上げが約4倍になったと聞きます。スキンケアやメイクに関心のある男性の来店者も増えたそうです。ぼくも美容液のサンプルを送ってもらいましたが、香りはスッキリして後に残らず、潤いだけが残る男性でも使いやすい商品でした。

近年、化粧品メーカーのジェンダーレス(社会的性差をなくす)戦略や、男性でも積極的にメイクするK-POPアイドルの台頭で、男女を問わずに使えるスキンケアやメイクアップ商品が増えてきました。いわゆるZ世代(1990年代半ばから2010年代半ば生まれのデジタル世代)には、性別を問わずスキンケアで身だしなみを整え、「自分らしさ」を求めて肌や髪などのメイクを楽しむ傾向がみられます。

でも、人としての本当の美しさって何でしょうか。表面的な姿形だけではないような気がします。外見だけではなく内面の美しさ、振る舞いを整え、心を整え、精神的なよい行いを重ねていく気持ちにあると思います。そして、いつか自分が歳を取って衰えていくことも受け入れていく必要もあるでしょう。
その意味で、最初に挙げた大谷選手の生き方は、人の美しさのひとつとして参考になるかもしれません。

また、今年3月末にがんで亡くなった世界的な音楽家・坂本龍一さんの生き方も参考になるでしょう。坂本さんは、細野晴臣さん、高橋幸宏さんと結成した日本初のテクノポップユニット・YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)に代表される先鋭的な音作りやビジュアルが話題を呼び、後の世代のミュージシャンに大きな影響を与えました。

また、坂本さんのソロ活動での「戦場のメリークリスマス」や「ラスト・エンペラー」などの映画音楽等で世界的に評価される一方で、環境問題や反戦・反核運動でも積極的な言動をしてきました。東日本大震災の被災者支援も積極的に行ってきました。今年に入ってからは、末期がんに苦しみつつも、多くの木々を伐採する神宮外苑の再開発の見直しを都知事に訴えていました。

 こうした大谷翔平選手や坂本龍一さんの生き方のように、外見だけの美しさだけでなく、行いや内面の美しさが伴って、その人の美しさが決まるとぼくは思います。